最果てのイマ

スペック

ジャンル:ジュヴナイルADV
メディア:CD2枚組
OS:Windows98/Me/200Prof/XP
メーカー:Xuse【純米】    発売日:2005/08/12
シナリオ:田中ロミオ  原画:あらきまき  音楽:たくまる
公式ページ

ストーリー紹介

幼い頃、とある施設で育った「貴宮忍」には、友達と呼べるものはいなかった。
そんなしのぶが、姉の「千鳥」と共に施設を出て最初にしたことは、友達を作ること。

近所に住むボーイッシュな少女「紅緒あずさ」。
同じ飼育委員となった、寡黙であり、辛辣でもある「本堂沙也加」。
地域でも有名な一族に属している兄妹「塚本斎」と「葉子」。
似た者同士といった感じで惹かれ合った「樋口章二」。
そして、偶然の出会いから近づいた「伊月笛子」。
彼らと忍、合わせて7人。
共に友人に恵まれなかった面々が、知り合い、仲間となり、早数年。
物語は、黄昏に彩られた静かな街で幕を開けた。

7人の間で繰り広げられる理解と共感、反発と衝突。
そして、思春期の淡い恋愛感情永遠に続く友情。
そんなまどろみのような幸せの中に、すっといられる―――はずだった。

―『敵』がその姿を現すまでは。

7人の輪を掻き乱す『敵』。
忍は、それを許さない。仲間を傷つけるものを許さない。
心を傷つけるものを許したくない。

それに気づいたとき、忍たちを取り巻く世界が変わる。
そこにあるべき新たな世界……聖域……に辿り着く。

これは、そんな。
         心を描く物語。

心の果てにあるものを描く、物語―――
(公式HPより抜粋)

・概要
 シナリオライター買いしました。注目の田中ロミオ氏の作品です。前作が少々微妙(神樹の
館)だったので、今回は!とういうような感じです。また、XUSEはこれまでにも良い作品を多く
出しているメーカーさんです。
 内容としては、上を読めばわかるように普通の高校生の恋愛もの…かとおもいきや、全然違
いますね、これ。まあ、やればわかります。『CROSS CHANNEL』にハマった方はやって損は無
いでしょう。

・絵、背景
原画はあらきまきさん。XUSEで何作か過去に担当されています。普通の絵、という説明が妥
当でしょうか。でも上手です。CGの塗り方が全体的にぼかすような感じがかかっていて、作品
全体の雰囲気を優しいものにしています。この塗り方は私は好きですね。でも、人によっては
そういった雰囲気や原画に会わない方もいる、と感じる絵でした。
背景は、まあ普通といったところです。

・システム
SAVE、LOAD時にダブルクリックが必要な点を除いてはとてもスムーズに動き、大変良い出来
です。演出等も良いです(特に最初の年齢確認&注意事項がすばらしい!)。シーンタイトルが
ついており、Optionでのおまけモードで、チャプターとして読み返せる点が特にすばらしいと思
います。逆にこの作品は必須だとも感じますが…。
物語はよくあるような選択肢で進めていくものではなく、基本的には一本道で何回も話を繰り返
す、しかし途中途中に登場する文章の中の「リンク」を選択することによって、僅かに話の流れ
が変化していき、最終的にひとつの結末にたどり着く、というような仕様です。この「リンク」、結
構曲者でSkipで自動的に止まってくれるのはいいのですが、ついページを進めてしまい、飛ば
してしまうことが多々ありました。多少シナリオ的には変にはなっても、直前でいいから選択を
戻れる機能が欲しいと感じました。

・サウンド、音楽
LittleWingのたくまるさん。綺麗なBGMでは随一(だと思ってます)で、今作でもその腕を遺憾な
く発揮されています。ですが、流石にこれだけメジャーになると、作風がマンネリ化してきた感じ
も…。OPのVocalは片霧烈火さん、EDVocalはさくらさん。ともに上手ですし、ともにゲームの主
題歌としては珍しい曲調の歌をきちんと歌い上げています。あとOPの曲がMovieとの関係上、
とても前奏が長いです。
 BGMについて感じた点についてひとつ。このゲーム、Voicelessなのですが、シナリオとも相ま
って(私的には)とても静寂の似合う作品だと感じられました。にぎやかな曲はなく、全ての曲が
ほぼ静寂そのものなのですが、一部のシーンで曲を流す必要はない、と感じる時がありまし
た。そこが残念な点です。


・シナリオ
ライターは田中ロミオさん。完全にシナリオメインの作品です。作品自体から氏のニオイがぷん
ぷんしますから。比べるのは良くないと解っているのですが、上記のように、氏の以前の作品
である『CROSS†CHANNEL』と似たような雰囲気が全体的にありました。しかしその作品よりは
テーマの重みや、話の悲壮感が強いです。
 また、公式HPに行くだけでは話の内容は全くわからないのも、またこの作品の良いところで
す。事前に私が想像していた物と、中身はほとんど違いましたから…。
(以下微妙にネタばれ注意!)
この作品は何回も話を繰り返しながら進めていくのですが、その順は
1〜5週目:各ヒロインとの日常的なシナリオ
6〜10週目:少し変化をつけた(主人公の心情がより濃くなった)シナリオ
11週目:戦争編
です。良くあるように、最初は日常を描いて次に修羅場、そしてHappyEDといった王道的な展
開です。しかしながら、細かい情景描写は氏の右に出る人はいないと思います!日常会話
の、なんてテンポがよく、なんて華があって面白いことか!また伏線の貼り方がまた上手い!
最後まで行って気がつくものが結構ありました(さらにクリア後読み返して、『敵』の正体を理解
したり)。
また、もしこの作品に音声があれば、かなり進めるのがたるんでいたと思います。それくらいテ
キストが多いのですが、それをあまり感じさせない文章でした。
 が、大きな問題があります。シナリオゲーに代表される語彙の難しさ。これが顕著に現れてい
ます。それがただの文学表現にとどまるレベルならば、ただ私が馬鹿だということに納まるの
ですが、怒涛の専門用語の嵐…哲学が出てきて、社会行動学、そして生物学に物理にコンピ
ューター…調べるのには普通の辞典ではなく、専門的、あるいは百科事典が必要です。本当
に難解でした…。一周しただけでは、この作品のテーマや、そもそも内容を理解するのが難し
いと私は思います。事実、私は終了後にチャプターを読み返して、理解度9割5分くらい、といっ
た感じでした。

―以下完全ネタバレ―
 登場キャラクターの一人である『イマ』、その正体が語られるのがEDロール後というのには驚
きました。流石にシナリオを握る(完全に左右する)キーパーソンなのですが、ちょっとおまけ感
が残ります。もう少し上手な扱いが欲しかったですね。
 あと、ある意味この作品、実は全部夢でした的なものなので、それも(作品の弱点として)見
過ごせない点だと思います。

・総評
とっても綺麗な作品です。が、難解です。テーマの受け取り方が各人で異なるであろう作品です
が、世界に対しての認識を考えさせられる作品でした。しかし難解さ故に、読み手を選ぶ脆さも
併せ持った作品だと思います。私的には2004年の春以降で最も上手なシナリオ、そしておそら
くシナリオについて評価すれば、今年度で最も良い作品だと思います。つまり、私にはドンピシ
ャで嵌まりましたw

評価
絵:6  音:8  環境:8  文章:10    総合:8


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