塵骸魔京

スペック
ジャンル:人外伝奇ADV
メディア:DVD1枚
OS:Windows98SE/Me/2000/XP
メーカー:Nitro+    発売日:2005/06/24
シナリオ:夜刀史郎  原画:Niθ  楽曲:ZIZZ STUDIO
公式ページ

・ストーリー紹介

 九門克綺は、他人との共感能力が欠けていた。しかし、寛容な友人の峰雪、アパートの管理
人、花輪黄葉の優しさに支えられ、平穏な学生生活を送っていた。
 そんな克綺の前に次々と現れる、謎めくものたち。彼女たちの不可思議な言動に日々、翻弄
されるだけの克綺だが、
やがて彼女たちの死闘の様を目の当たりにすることになり、彼は知る。
彼女たちこそは人外の眷属――異界の文化と価値観を持つ
魔性の存在であると……。
 人外の者たちとの対立にいやおうなく巻き込まれてゆく克綺。やがて彼は自らの数奇な運命
と、それを巡る陰謀の謎に迫っていくことになる。
                               (公式HPより抜粋)

・概要

 Nitro+の2005年度第一作目です。人間と人外の存在の価値観の違い、またそれを踏まえて
の共存を描いた作品です。またその中で、主人公がいかに心を得ていくか、を描いた作品とも
言えるでしょう。 また、Nitro+の他の作品に漏れず、主人公は最後には中々の強さを見せてく
れます。

・絵、背景

 原画はNitro+の前作でブレイクしたNiθさん。とても滑らかな曲線を多用し、繊細な画を描き
ます。あとNiθさんの絵の特徴のひとつに、人物のデザインが特徴的である、という点が挙げ
られます。現実にはありえない格好の人物が多いのですが、それが作品を引き立てるエッセン
スにもなっているよう感じます。あと、もうひとつの特徴として…すごくえっちぃですね。
 で、今回からCaramel‐Boxの暗黒絵師さんが途中の何箇所でコミカルな挿絵(JOJO!)を入
れています。その作品とのあまりにも大きなギャップには馴染めませんでしたが、これはこれで
好いアクセントになっていると感じました。この絵のほうがイイ!という方は、おまけモードをや
る価値があるでしょう。ただ、私は全部はやってません…どなたか全部やって感想聞かせてく
ださい。
 全体的なCGの評価としては文句なし、の一言です。2、3箇所CGが欲しいな、というところは
ありましたが、それ以外の全ての部分では演出の仕方や背景等も含めて良かったです。

・システム

 前々作のデモンベインとほぼ同じようなシステム構成です。不満箇所は、画面から戻る、操
作のキャンセル等が右クリックで出来なかった点、CG鑑賞でいちいちエフェクトがかかって観
難い点でしょうか。それ以外はとても良い出来ですし、動作もとてもスムーズです。
 ただ、隠しシナリオに行くためには、全てのBADEND回収をしなければならないのが大変でし
た。まあ、直前の選択肢に自動で戻る機能があるのは好意的ですが…

・サウンド、音声、音楽

 Full Voiceです。皆さん上手です。デモベのときのあのショックを今回は感じずに済みました…
男性陣の声は今までの路線からはちょっと外れた選定になっているような感があります。が、
これはこれでまた上手にマッチしていました。女性陣はみなさん上手なのですが、何人か声と
キャラクターが合ってないな、と感じる部分がありました(まきいずみ女史とかとかとか)。
 サウンド等も問題ありません。とてもいい音質です。
 音楽はお馴染みのZIZZ STUDIOさんが手がけていますが、今回は今までとは路線が変わっ
て、全体的にアジア的な雰囲気がありました。BGMの中にはかなり前衛的な取り組みのものが
沢山ありましたが、そのほうがこの作品の持つ混沌というイメージには合っていますね。流石
ZIZZ!OP曲はこのまま聴いた限りではあまり興味がなくても、是非サントラを買ってFullバージ
ョンを聴いてみて下さい。僕はこれを聞いて初めて嵌りました。ED曲は知ってる人にとっては、
意外な選曲がなされています。

・シナリオ

 シナリオに関しては良い出来だと思います。文章の文字自体が生き生きと躍っているような
印象を受けました。その所為か、戦闘シーンはもちろんのこと、作品全体が躍動感を持ってい
ます。従来の傾向からいって、Nitro+の文章は理知的で堅いものが多い。その点では今作は
異端、とも言えるでしょう。
 ストーリーの展開は非常にスムーズに進んでいます。シナリオごとの時間軸のズレは特にあ
りませんし、シナリオによっては展開も全く変わってくるのですが、そのまとめ方も非常に上手
です。ですが、何箇所かあまりにも急に物語が進行するところがあったり、先が予想できるよう
な進行をしている場面も少なくありませんでした。演出上仕方ない、と感じる面もありますが、そ
こは惜しかったと思います。伏線の貼り方もまだまだ、といった感じです。以上のように荒削り
な部分もありますが、躍動感という視点からは総じて良いものばかりであるともいえるでしょう。
 また、この作品がNitro+っぽくないひとつの要因として、テーマ性の弱さがあると思います。
おそらくは、上の概要で述べたような人間と人外の価値観の違いが大きな要因になるのでしょ
うが、それよりも主人公の成長に関する部分にばかり重点が置かれているような感がありまし
た。歴代の作品はほとんどの作品がテーマが先にあって、そこから作品が作られた、といって
も良いくらいテーマがはっきりとわかるのですが、今回に関してはもっと軽い「ノリ」でした。そう
いった意味で、今作はNitro+らしさは無かったように感じます。シナリオの雰囲気として、Nitro+
らしさを求めるのであれば、この作品に限らず最近の作品はその要求を満たすことは出来な
いでしょう。「燃え」で買うのであればハズレはありませんがw

・総評
 Nitro+っぽさのあまり無い作品ですが、それでも熱いです。また、タイトルをよく表した作品で
す。路線としてもラノベです。私としては、Nitro+に今後こういった方向には進んで欲しくないで
すね。

   絵:9  音:9  環境:5  文章:6    総合:7.25


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